『南京虫』

時計用語の日本名にはちょっと変わった言い方をするものがあります。例えば、『干支(えと)』、『菊(きく)』、『鴛(おしどり)』、『鼓(つづみ)』、『香箱(こうばこ)』、『閂(かんぬき)』、『女持ち(めもち)』、『舶来(はくらい)』などなど。『女持ち』=『レディースウォッチ』、『舶来』=『(主に欧米の)海外製品』なんかはわかりやすいですよね。それ以外は全て時計の部品なんです。ちなみに『干支』は『文字盤』、『菊』は『リュウズ』です。『竜頭(りゅうず)』もかなり面白い呼び名ですが(笑)。そして『南京虫(なんきんむし)』も変わった呼び方の一つではないでしょうか。何のことか分かりますか??

答えはこれです。

このような小さいアンティークレディースウォッチの事を『南京虫』と呼ぶのです。年配の方やアンティーク時計が好きな方はご存知の方も多いかも知れませんが、ずいぶんな呼び名ですよね。南京虫は“トコジラミ”という吸血性の小さな寄生昆虫の別名です。『南京虫』の時計はケースが18Kや14Kなどの無垢で造られているものも多く、輝石をあしらったり、ガラスにカットが入ったりとデザインも可愛いのですが、本物の南京虫は全く可愛くありません。実物が気になる方は画像を検索してみて下さい。昔は海外から伝わってきた小さいものや珍しいものに『南京』とつけたようで、トコジラミも海外からの荷物に紛れていたことが多かったので”南京虫”と呼ばれたようですね。

なぜそれで小さなレディースウォッチが『南京虫』なんて言われているのかというと、「形が似ているから」というのが通説のようです。DSCN6109

また、時計店を営んでいた職人のおじいさんに聞いた話では「海外製品の関税が高かった時代に舶来の女持ちを分解して、部品として積み荷に混ぜて輸入していたからだ」との説もあります。なんだか本当に南京虫のようですね。そして、「よく売れて儲かった」とニンマリして言っていました(笑)。

そんな『南京虫』が数本まとめて入荷しました。メンテナンスが完了次第、店頭やHPに出していきます。どんなのがあるのか、是非楽しみにお待ちください!DSCN6112

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