夏の陽射しが照り付ける8月の半ば。
11時の開店間もなくご来店されたのは、3ヶ月ほど前に奥様とともにOMEGAを買って下さった杉尾様。時計についてインタビューさせてほしいとお願いしたところ、こころよくOKしてくださいました。
「今日はなにかいいのが入ったかなと思ってね」
そう物腰柔らかに話す杉尾さんの腕には、OMEGA。奥様と一緒に購入して頂いたんですよね、と聞くと、店頭に並んでいるレディースのOMEGAをさして「そうそう、こういう感じの。」と教えてくれました。
ビンテージの時計が欲しいと思っていたところ、当店があることを知って足を運んでくださったそう。
一本目に選んだのは、ぷっくらとした厚みが印象的な1961年製のOMEGA Seamaster。
「製造年が自分の生まれ年に近くて、しっかりした形が欲しかったので。製造年が生まれ年の翌年なのとこの厚みに惹かれました。あとやっぱり音がいいですよね」
自動巻のこの時計は、時計を動かすたびにローターの回る音がかすかに聞こえる。時折、時計をながめながら愛着に満ちた様子で語る杉尾さん。
“好き”のレベルを人に伝える方法は、どれだけ知っているか、どれだけ持っているか、かもしれないけど時計を眺めるその様子だけで伝わる場合もあるし、それでいい。
「これもいいし、これもいいなあ」と、ひとつひとつ店頭に並ぶ時計を手にとって眺める。
「次買うとしたら、雰囲気違うやつがいいかなあ。価格も考えつつだけどね(笑)」
これからの展望をそう語る杉尾さん。
ビンテージは一期一会。いつ出会えるかわからない、二つとして同じものがない。
それがビンテージの面白さだったり、魅力でもあります。
「ありがとうございます、また来ます」
そう言って、新たな出会いに期待しながら店を後にする杉尾様。
今日はこれから、地元である熊本に帰るそう。
好きなものを好きな理由なんて、あれこれ語らなくてもいい。ただ”好き”でいい。
まっすぐな気持ちと、時計への愛着を感じるここちよいお話を聞かせて頂きました。
杉尾様、ご協力誠にありがとうございました!
文・写真 神瑞希