とても懐かしい気分になる

先日、バンド交換希望のご年配の方と話しているとなんとなく戦後の時計のお話に。

現在の時計のデザインは『デカ・アツ』ブームが続いていますが、終戦直後のアメ横でも大き目で風防面にカバーのついた時計(懐中時計を腕時計にしたものでしょうか)が売られていて、ブレスレットのようでカッコよかったそうです。今でも上野、御徒町界隈に多くの時計店や時計材料店があるのは、その当時からの流れでしょうか。

WALTAHMやELGINといったアメリカブランドが多く、LONGINESなども人気があったんだそうです。ちなみに「精工舎(現在のSEIKOです)なんか全然だった」とのこと。SEIKOが世界的な企業に成長していくのは戦後の復興が進んでいった1950年代以降のようですね。(⇒セイコー腕時計の歴史

当時の時計は今よりもはるかに高級品で何個も持っている人は少なかったようです。それでも「みんな初任給が出ると銀座の天賞堂などに行って給料の半分位を使って時計を買った」らしく、また「上司は少し良い時計を着けていて、『いつかもっといい時計を買うんだ!』と頑張って仕事をした」のだそうです。時計は社会人としてのステータスシンボル、そして憧れの象徴でもあったんですね。

wako戦後の銀座4丁目

そういった方々の努力のおかげで敗戦から立ち直り経済成長を遂げた日本。どんどん身の回りの物は便利に多様化して、時計もデザインや機能、価格、ブランドなど選択肢は様々で、100円ショップでも手に入ります。でも、時計には道具としての価値以上の何か求め、感じる人が多いですよね。それは積み重ねてきた時間が関係しているのかも。

「我々なんかは手巻の時計を巻き上げると、とても懐かしい気分になる。」のだそうです。