時計と一緒に大切なものが結びつき新しいストーリーが生まれるって、素敵なことだ。
今回そんなエピソードを聞かせてくれたのは、何度か当店で時計をご購入いただいている吉田さん。この日は以前にお買い上げ頂いた12角ダイヤルのOMEGA Constellationを腕に、秋らしい栗色のスーツでご来店。
「これ、友達から譲り受けたんだけど」と大事そうに別の古いオメガを取り出し、その時計のオーバーホールを依頼したいとのこと。
親族からは多いかもしれないけれど、友達から高級時計を譲り受けるなんて。
お友達からですか?と聞き直すと「そうなんです」と威厳ある渋い声と場を包み込むような柔らかい口調で、ことの運びを教えてくれた。
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少し前のある日、同窓生が集まる飲み会にオメガのコンステレーションを着けて行ったんです。
そしたら同窓生のうちの二人が、一人は父から、一人は祖父から譲り受けたというコンステレーションを腕にしていて、それがきっかけで40数年ぶりに会った同窓生と時計の話で盛り上がったんです。
その後しばらくして、訃報が届きましてね。時計の話で盛り上がった友人の一人は以前から体調が優れなかったらしい。
その友人の葬式に出席した際、こんどは別の同窓生の女性に時計のことで声をかけられ、「時計好きって聞いたから」と一本の時計を渡されました。
「父の時計なんだけど、私にはちょっと大きいし時計が好きな人が持っていた方がいいかなって思って」
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それが今回お持ち頂いた時計。困惑しながらも一度は受け取ったがどうしたものか、大切な時計ならば返すにしても修理をして使えるようにしてあげよう、ということらしい。
同窓生と語らうきっかけとなったオメガのコンステレーション。そして友人の父のOMEGA。年代を超えて愛される時計とたどる道。
重なったり、別れたり、また出会ったり。受け継いだものを、こうやって愛をもって大切に扱う人がいるからこそ誰かに受け継がれ、そしてまた新しい物語が始まっていく。
受け継ぐ人々の貴重な時計のストーリー、そのほか楽しいお話もたくさんお聞かせいただきありがとうございました。
ちなみに吉田さん、楽器の経験は全くないにもかかわらず、最近サックスを始めたそう。
少しずつ吹けるようになっていて楽しい、と語ってくれました。
年を重ねても新しいことにチャレンジしているってすごいですね…!